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「成均館スキャンダル」コロユニ二次小説ブログ

はじめに(&目次)


snowflakeにお越しいただきありがとうございます。
当ブログは韓国ドラマ二次小説を扱っています。
版権・製作元とは一切関わりのないサイトですので、
同人・二次創作へのご理解をお願いいたします。
おもに「成均館スキャンダル」コロユニを書いていますが、
「善徳女王」ピダム×トンマンも少々綴っています。
閲覧後の苦情・転載・剽窃等はご遠慮くださいませ。

一度閉鎖を決定しましたが、復活いたしました。
またどうぞよろしくお願いいたします。

(目次→追記より)


2014.02.17~ 管理人:椛

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葛藤 (7) 【善徳女王】

実を結ぶ木 【二度目の正直(終)】


 ──嘉慶八年、中秋。
 船着き場の広い桟橋は、杭州からやってきた客船を降りる旅客と、その出迎えの人びととでおおいに賑わっている。
 最後まで甲板に残っているのは、編笠を目深にかぶったひとりの旅客だ。
 周囲の喧騒が耳に入らないのか、じっくりと書物を読みふけっている。航海中、船が海風で激しく揺れ、旅客のうちの何人かが甲板に出て船酔いに苦しんでいるあいだも、その人はずっとそうして活字を追っていた。
 その視線が熱心にたどっている書物の頁に、ふと、太陽の光が雲にさえぎられたような、濃い影がかかる。
「──いつまで、待たせるつもりだ?」
 頭上から降ってきた深い声に、旅客ははっと目線を上げた。
 はずみで編笠の陰にかくれていた美しい顔が、白日のもと、あらわになる。
 男のような旅装をしているが、それはまぎれもなく女人の顔であった。
 大きく見開かれた瞳が、その存在を確かめるや、磨きぬかれた玉石のようにきらきらと輝きだす。
「……コロ先輩?」
 彼女に声をかけた男が、ふ、と口角をもちあげた。
「この俺に待ちぼうけを食らわせるとは、いい度胸だ」
「あっ、その……すみません。ちょっと本に集中していて……」
 しどろもどろな言い訳をみなまで聞かず、彼は突然すっとしゃがんだかと思うと、まるで米俵のように軽々と彼女を片方の肩へ担ぎ上げてしまう。
「せ、先輩!?」
「暴れるなよ。落っことされたくないだろ」
 桟橋の人びとがぎょっとして二人を見上げていた。ユニの顔がみるみるうちに紅潮する。
「みんな見てます……!お、下ろしてくださいっ」
 ジェシンは、意地悪な笑みを絶やさない。
「お前がさっさと船から降りてこないのが悪い。──わかってるだろ?俺は気が短いんだ」
 目をしばたたいている船頭に、十分に船代をはずんだ巾着袋を手渡すと、彼は桟橋の近くにつないであった馬の背に彼女を乗せた。みずからはその後ろに跨り、手綱を強く引く。
「きゃあっ」
 馬が突然走り出したのに驚くユニ。彼女をぐっと自分のほうに抱き寄せて、その耳にジェシンは唇を寄せた。
「俺のほかにも、首を長くしてお前を待ってる奴がいる。……だから、早く帰ろう」


 先王崩御、そして王世子の即位から、三年の時が流れた。
 都城トソンは今や大妃テビを筆頭とする安東金アンドンキム氏の天下となりつつある。おさない王に政を行うことは困難と判断した大妃金氏が、自ら摂政となって朝廷をその手中におさめたのである。
 老論ノロン一門の出身である大妃の施政により、敵対する少論ソロン南人ナミンはその多くが粛清の憂き目を見た。
 そうした中、少論一門を率いるムン家が、災厄を免れたのは──奇しくも老論の筆頭である左議政チャイジョンが、大妃を牽制したためであったという。
「イ・ソンジュンが、お前たち二人を守ったのさ」
 板の間の柱にもたれかかったヨンハが、吹き抜ける風に目を閉じながらつぶやいた。
 そのかたわらではジェシンとユニの幼い息子が、板敷きの床の上で、無心になって清国土産の蟋蟀こおろぎと戯れている。
「コロだけじゃない。テムル、お前の弟も今や立派な官吏だ。将来有望な南人一門として、粛清されてもおかしくなかっただろう。──きっと、カランが助けたんだよ。左議政の父親に口をきいてもらってさ」
 蟋蟀のしずかな鳴き声が、板の間にさわやかな秋風を呼ぶ。庭先では無窮花ムグンファの枝がひっそりと揺れている。
 ユニが清国への留学に発った時、漢城ハンソンはまだ花の芽吹きが待ち遠しい初春だった。出発前に、唐紫躑躅チンダルレを摘んできて、花餅ファジョンをふるまったこと。──そしてそれよりもずっと前、婚家の台所で一生懸命餅をこねた日のことが、つい昨日のことのように思い出される。
 不意に、ユニの目頭が、熱くなった。
 悲しさのため、ではなかった。
「あいつは──」
 ジェシンの大きな手が伸びて、撲巾ポッコンをかぶった息子の頭をくしゃりと撫でた。
「イ・ソンジュンは、確かにそういう奴だ。誰よりも仁義を重んじる。一度は心を通わせた相手を、絶対に見捨てたりしない」
 なあ、きっとそうだろう、──と。
 揺るぎない彼の瞳が、ユニに問いかけていた。
 泣き出しそうな笑顔で、彼女は頷く。
「──おいで、ジェユン」
 さかんに跳ねる蟋蟀を四つん這いになって追いかけていた子どもは、母親に呼ばれると、はじけるような笑顔でその温かな胸に飛び込んだ。
 この世でたったひとり、愛する人と自分の血を分けた存在を、ユニは繭で包み込むようにやさしく抱き締める。
「ありがとう……」
 息子が腕の中で小首をかしげた。花のように微笑みながら、その白く柔らかい頬に、彼女はそっとほおずりをした。


 満月の宵、ジェシンはユニを遠乗りに誘った。
 月見にふさわしい小高い丘の上では、長い穂をもたげたすすきがゆったりと夜風に揺れている。豊穣の秋をむかえた大地を、天上の月がはるかな高みから見守っていた。
 黄金に色づいた大銀杏の木に登り、二人は広大な都城の光景を見おろしている。
「──広く見えて、窮屈なところだと思わないか?」
 ユニは隣の彼を見上げた。
 出会った時から、足かけ十二年。
 人生の酸いも甘いも噛み分けて、その横顔はますます精悍さを増していくようだ。
「清国から、戻ってきたくなくなったんじゃないか」
「どうして、そうお思いに?」
 ジェシンの指が顎にかけられ、額と額が、そっと触れあった。
「お前ほどの女には、この国は、生きにくいだろうから」
 ユニは、口元をほころばせる。
「窮屈でも、生きにくくても、私はここに戻ってきたいんです」
「愛する息子がいるから、だろ?」
「ええ。それに……」
 あなたがいるから、と俯きがちに告げると、下からすくいあげるように唇をついばまれた。
 長い口づけをかわしたあと、甘い溜息とともにユニはつぶやく。
「──孔子は、銀杏の木の下で講釈することを好んだそうですよ」
 ああ、と、彼女の肩を抱き寄せながら、ジェシンが頷く。
「昔、兄貴に聞いたことがある。成均館にある銀杏の木は、すべて雄の木らしい」
「雄の木、ですか?」
「そうだ。女人禁制の成均館ソンギュンガンだから、雌の木がひとつもない。成均館の銀杏は、どれも実を結ぶことがないんだ」
 彼が笑ったのが、こぼれる吐息でわかった。
「でも、お前を見つけた。成均館にはいるはずのないお前がいた。──お前に出会ってから、誰かを恨んでばかりだった俺の人生が、まるっきり変わったよ」
 ジェシンは首を傾けて、ユニの目を覗き込んだ。
「正直に、言ってもいいか」
「──何をですか?」
 目を閉じて、一呼吸おいてから、彼は初めてそのことを打ち明けた。
「イ・ソンジュンに、感謝してる」
 ユニは目を見開いた。
「あいつだけじゃない。お前を俺の目の前に連れてきてくれた、すべてに感謝してる。──ユニ」
 ジェシンの大きな手が、彼女の手を強く握り締める。
 いつもそうしてユニを繋ぎとめてきたように。
 そしてきっと、──これから先もそうするように。
 



【 終 】

「二度目の正直」はこれにて完結となります。
連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。
追記より、後書きをご覧いただくことができます。


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