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菩提樹の下で 【ピダム×トンマン】

善徳女王、思春期if妄想。※女の子ネタを含みます。ピダム15才、トンマン14才程度を想定。

 春に咲いた可憐な桃の花をじくじくと腐らせる雨期がやってきた。
 菩提樹の木陰で雨宿りをする少女の表情は浮かない。太い幹にもたれかかり、雨が大地を打つ音を聞きながら、濡れそぼった自分の体を震える腕で抱き締めている。
「──かくれんぼは、おしまいだ」
 突然の声におどろいて駆け出そうとする少女の手首を、声の主である少年がすかさず菩提樹の裏側からつかまえた。
 顔つきにあどけなさが残るものの、成長期の真っただ中にあり、大人として完成しつつあるその体躯が少女の目の前に立ちはだかる。
 この雨の中、彼女を方々探し回ったのだろう。髪はしっとりと雨水をふくみ、すっととおった鼻筋をなでるように、水滴が伝い落ちていく。
 少女には、それが涙のようにも見えた。
「どうして俺から逃げるんだ?」
「……」
「トンマン」
 少年は悲しみ、いらだっているようだった。言葉が見つからず黙ったままでいる少女の肩をつかみ、もどかしげに菩提樹の幹に押しつける。
「俺がお前をどれほど大事に想っているか、お前はよく知ってるはずだ。なのに理由もなく俺を避けるなんて……許さない」
 ピダム、と途方に暮れて少女はつぶやく。感情をあらわにする端整な顔を間近にして、息がつまるような思いを味わっていた。
 ──兄妹のような仲のまま、いつまでも傍にいられると思っていたのに。
「ほら、また俺から顔を逸らす」
 ピダムの手がトンマンの顎をとらえ、無理やり自分に向き直らせる。真一文字に結ばれたトンマンの唇がわななく。
「ちゃんと俺を見ろよ」
「……嫌」
「何だって?」
「嫌だ、嫌っ──」
 反抗の声は、性急に覆い被さってきたピダムの唇に封じられた。それが強引に奪われた初めての口付けなのだと頭が理解するまで、トンマンはただ呆然と彼のなすがままにされていた。
「ン──!」
 舌を絡められた衝撃にトンマンの体がかっと熱くなる。頭が混乱した彼女は咄嗟に顔を背け、それ以上翻弄されることを拒んだ。それでもピダムの強引な口付けの感触は生々しく唇や舌先に絡みついたまま、トンマンの心臓の鼓動を今以上に速めようとする。長い距離を走った後のように、息切れがとまらない。
「──ひどい。いきなりこんなことをするなんて……」
「ひどい?」
 菩提樹の幹に押しつけた拳と同様、ピダムの声がぶるぶると震えていた。
「俺が……ひどいって?お前が戸惑わないように、今までずっと我慢してきたのに……」
 突然、強い力で抱き締められたトンマンは、押しつぶされそうな息苦しさに目を見開いた。衣越しに伝わるピダムの体温が焼け付くように熱く感じられた。
「ピダム、熱があるんじゃ──」
 雨脚が強まり、もはや木陰にいても雨露をしのぐことができない。菩提樹の花の淡い黄色が、湿った地面に絨毯のように敷き詰められていく。
「……嫌なら、突き飛ばしてみろよ」
 ほら、と挑発するようにトンマンの耳元で囁くピダム。その呼吸がいつもよりもずっと浅く乱れていることに否応なしに気付かされたトンマンは、雨に濡れた寒さだけではない理由で肩を震わせる。
 押しつぶされそうな心臓が煩い。
 ──下腹がねじれるように痛い。
 追い打ちのように少年の宥める声が聞こえる。
「トンマン。お前はもう──力で俺に勝てないんだよ」
 嫌だ、と心の中で昨日までのトンマンが勇敢にあらがう。女の徴をまだ見たことのない、あどけない少女だった頃の彼女。──自分はまだ、男でも女でもないと信じ込んでいた。
 朝目覚めた時、脚の間にじわりと覚えのない生温かさを感じた衝撃が、今も冷や水を浴びせるかのようにトンマンの全身を竦ませる。
 それが何かを知っていたものの、確かめることが空恐ろしかった。自分の体が自分のものではなくなったような不気味な感覚に苛まれていた。仮病を使ってまで寝床にとどまろうとする彼女の異変を、つねに行動を共にしてきたピダムが目ざとく察知した。
 トンマンはピダムから逃げた。雨に濡れても外を走り続けた。彼には悟られたくなかった。──彼女が昨日までの彼女ではなくなったことを。
「トンマン」
 聞き慣れたピダムの呼び声が今日はなぜか胸に響いた。トンマンの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「俺から逃げないで。俺に──お前を守らせてくれ」
 背伸びをしてももう彼には届きそうもない。トンマンがそうなりつつあるように、ピダムもまた、奔放な少年時代に別れを告げようとしていた。



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'Dragostea Din Tei' (菩提樹の下の恋)という曲を久しぶりに聴いた記念に。

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3 Comments

椛  

拍手お返事

>りり様
「もしピダムとトンマンが少年少女時代を一緒に過ごしていたら」というif妄想でした。
小説版ではユシンに奪われておりましたが…ここではトンマンのファーストキスはおそらくピダムが「惜しみなく」奪ってくれることでしょう(笑)
思春期に差しかかりピダムを男として意識し始めるトンマンですが、ピダムの方はもうずっと前からトンマンを自分の花嫁として見ていると思うのです。
『青いサンゴ礁』という映画があるのですね。
タイトルからして爽やかそうな作品ですね…!

2017/04/19 (Wed) 10:08 | EDIT | REPLY |   

PPP  

思春期編、もう最高(〃ω〃)
男女の性の真ん中にいたトンマンも体は確実に変化し始め、ピダムもまた少年から青年への過渡期に。
本人たちはこんなに戸惑い、苦しみ、想いに耽っているのに、読んでいる私は萌えております(//∇//)
ピダムの壁(樹木)ドン、アゴクイ❤︎
ヤバイヤバイ・・!
瑞々しいふたりと、このそそられる設定❤︎
これは愛読編だ〜。5161
この続きもまたぜひぜひ読ませてくださいませ♫

2017/04/19 (Wed) 17:52 | EDIT | REPLY |   

椛  

コメントお返事

>PPP様
思春期編、お気に召したようで光栄です…!
色気づいてきた少年ピダムに困惑しながらも、じわじわと落ちていく少女トンマンを見てみたいです。
樹木ドン&顎クイ、ちょっとピダムにしては大胆かなと思いましたが「若気の至り」ということで…。
愛読していただけるなんてとても嬉しいです。
PPPさんに捧げるために、是非とも続きを書かせていただきたいと思います!

2017/04/19 (Wed) 18:50 | EDIT | REPLY |   

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